住民健康講座

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令和8年9月10日(木)第298回『人生会議をしよう』

場所津市久居アルスプラザ アートスペース
津市久居東鷹跡町246
※満席の場合、ご入場をお断りいたしますので、予めご了承ください。
講師コスモスクリニック
院長 小田幸子先生
講演要旨1. 人生会議(アドバンスケアプランニング・ACP)の基本概念と目的
自分が大切にしたいこと、望む生き方、もしもの時の医療・ケアを前もって考え、家族・大切な人・医療介護チームと話し合い共有する継続的プロセスである。
本人の思いを尊重し希望する医療・ケアの実施につなげるための「よりよく生きる」ための話し合いである。
突然の事故や病気で意思伝達が困難になる可能性がある。また医療の進歩で選択肢が増えたことで悩みが増える。延命可否に限らず、価値観、幸せの定義、生活目標、望むケア、最期の場所、苦痛緩和の優先度、在宅志向などを具体化し、代理で意思を伝える人を決める。気持ちは変化するため人生会議は何度でも行うとよい。
2. 具体的ツールと資料
津市在宅療養支援センターはリーフレット「いつまでも地域で自分らしく過ごす~自分らしく幸せのために~」と「私の心づもりシート」を作成している。記入項目は価値観、やりたいこと、望む医療・介護、最期の場所、代理人指定などを記入しながら自分の気持ちを整理していくとよい。一度に全部埋める必要はない。
市販の「終活ノート」では緊急連絡先や葬儀・墓の希望、また資産・負債、生命保険のリストなどまとめることができ、そこに自分の思い希望を記入してもよい。
3. 医学の進歩と治療選択の現代的課題
医療技術進歩や医薬品開発のおかげで治療することで長く生きられる病気が増加し、高齢でもがん治療が可能になるなど選択肢が拡大している。
そこで新たな悩み、例えば進行がんで治癒見込みがない状況でも腫瘍縮小や延命目的の治療を勧められる場面が生じ、本人・家族の判断が混乱することがある。
急変時に「延命治療をしますか?」などの選択を迫られ、本人の意思不明のまま葛藤・意見相違・後悔が発生しやすい。
4. 人生会議の進め方とコミュニケーション
災害発生後では間に合わないのと同様、平時の備えが重要で混乱や後悔を減らせる。いざという時に自分と家族を守る準備である。
日常の会話、ニュースや身近な話題から「死ぬまでにしておきたいこと」に触れ、もしもの病気や死について話す雰囲気づくりをできるとよい。
「心づもりシート」等で、病状説明の受け止め方(知りたい/知りたくない権利含む)、延命より苦痛緩和優先、在宅志向、家族への配慮などについて、自分の気持ちを整理して、言語化する。代理意思決定者を明確化する。人生会議に関わってほしい人(家族、友人のほか、かかりつけ医、看護師、ケアマネ等)も洗い出しておく。
5. 在宅医療(訪問診療)
在宅療養希望者のもとへ医師や看護師が訪問すること、訪問診療は計画的・定期、往診は突発的変化への対応となる。
訪問診療・看護・リハ・栄養・薬剤指導など病院同様のサービスを多職種で提供すること。相談は医療ソーシャルワーカー、ケアマネ、在宅療養支援センター、包括支援センターへ。
通院困難事例や入院からの移行プロセスは病院のMSW(医療ソーシャルワーカー)とケアマネが連携し担当者会議で在宅体制(日々のケア、介護、デイサービス等)をつくる。これ自体が人生会議ともいえる。
6. 終末期医療と緩和ケア
終末期とは人生の最終段階。中心は苦痛・不安の軽減と穏やかな時間を支える緩和ケアで、積極的治療の不実施は「何もしない」ことではない。
延命は悪ではなく、人工呼吸器や胃ろうで回復・栄養改善するケースもある。それがたとえ短い時間であっても本人の希望であれば悪いことではない。延命するしないにかかわらず、終末期医療に正解はなく、本人の価値観次第である。最も大切なのは本人の望みである。
7. 質疑応答
*経済面で在宅と入院ではどちらが負担がすくない?
:在宅医療と入院で費用の大差はないと思う。
*「棺桶まで歩こう」という本を読んだが、そのドクターの意見について思うことはあるか?
:全部読んだわけではないので、映画を観た感想で。最後の最後まで自分でトイレに行くなど在宅医療に力を注いでみえるドクターだが、それも治療を受ける人の考え方次第なのと、現状この地域で24時間対応できるネットワークが十分ではないと思う。(注記:演者が知らないだけかもしれない)
*人工呼吸器の非導入を家族が決めたら殺人罪?罪に問われるのか?
:非導入は自然経過であり殺人ではない。一旦装着後の離脱は殺人に該当し得る(日本の現状)。そのため、延命を望まない明確な意思があれば、たとえ書面や記録がない場合でも非導入を選ぶ心理的負担が軽減される。