住民健康講座
過去の住⺠健康講座要旨
令和7年11月6日(木)第290回『薬の知識の詰め合わせ』
| 場所 | 津市久居アルスプラザ アートスペース 津市久居東鷹跡町246 ※満席の場合、ご入場をお断りいたしますので、予めご了承ください。 |
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| 講師 | 津薬剤師会/ペンギン薬局 代表 管理薬剤師 佐藤 亮先生 |
| 講演要旨 | 本講座では、地域の皆さまが日常生活の中で安全・安心に薬を使えるよう、「薬との正しい付き合い方」をテーマに、飲み薬・塗り薬の使い方や、飲み合わせ、薬局の役割などについてお話しました。 ________________________________________ 1. 薬局は単なる「薬の受け渡し場所」ではありません 薬局は、医療機関や介護・福祉関係者と連携しながら、患者さん一人ひとりの薬の使い方をサポートする役割を担っています。薬局では、処方された薬が本当に患者さんに合っているか、重複や相互作用がないか、きちんと使えているかを確認する「薬学的管理」も大切な仕事のひとつです。 ________________________________________ 2. 飲み薬の正しい使い方「5つのポイント」 1. タイミング:食前・食後・食間・頓服など、決められた時間を守ること 2. 量:自己判断で増減させず、決められた量を守ること 3. 飲み方:コップ1杯の水で飲むのが基本。お茶やジュースは注意が必要 4. 期間:症状が改善しても、医師の指示なしに自己中断しないこと 5. 飲み合わせ:他の薬や食品との相互作用に注意すること 特に「食間」は「食事中」ではなく、食後2時間ほど経過した空腹時を指すため、誤解しないよう注意が必要です。 ________________________________________ 3. 塗り薬の正しい使い方 塗り薬も、以下の点を守ることで効果的に使えます。 • タイミング:入浴後や朝の着替え時など、肌が清潔で乾いているときが理想 • 量:塗る範囲によって必要な量が異なる(例:1FTU=大人の人差し指の第一関節分=約0.5g) • 塗り方:擦り込まず、やさしく伸ばす。塗る方向は横向きが基本 • 期間:良くなったように見えても、自己判断で中止しない • 塗り忘れ時の対応:次の塗布まで十分な時間があればすぐ塗布。近い場合は1回飛ばす ________________________________________ 4. 飲み忘れ・塗り忘れの対応 薬の種類や服用間隔によって異なりますが、共通して言えるのは 「次のタイミングが近い場合は2回分をまとめて使わない」ことです。 目安として: • 1日1回の薬:12時間以上空いていれば飲む • 1日2回:4~6時間以上空いていれば飲む • 1日3回:2~3時間以上空いていれば飲む 心配なときは医療者に確認を。 ________________________________________ 5. 相互作用の基本と注意点 薬には相性があり、「一緒に使うと効果が変化する」「副作用が強く出る」といった組み合わせがあります。 また、食べ物や飲み物との相互作用にも注意が必要です。 • グレープフルーツ:一部の薬の分解を阻害し、効果が強く出すぎる可能性があります。作用は24時間続くため、飲むタイミングだけ避ければいいというわけではありません。 • アレルギー薬「ビラノア」:空腹時に服用しないと効果が半減します。 • 帯状疱疹治療薬「アメナリーフ」:必ず食後に服用が必要です。 これらの例からも、「食べ物と薬の相性」を意識することの重要性がわかります。 ________________________________________ 6. お薬手帳とマイナンバーカードの違い お薬手帳は、相互作用の確認や災害時の薬歴情報の提供などに役立つツールです。 マイナンバーカードにも調剤履歴が記録されますが、 • 表示できる期間が限られている(1ヶ月~過去5年) • 同意がなければ閲覧できない • 災害時はアクセスできない可能性がある などの制限があります。お薬手帳は現在も重要な健康管理ツールであり、電子版(アプリ)も活用可能です。 ________________________________________ 7. 「かかりつけ薬局」「かかりつけ薬剤師」をもつということ かかりつけ薬剤師は、患者さんに継続して関わることで、処方薬・市販薬・サプリメントすべての使用状況を把握し、最適な薬物治療をサポートする専門家です。 • 薬の重複や副作用のチェック • 休日や夜間の服薬相談 • 医師や訪問看護師など他職種との連携 • 在宅訪問や服薬管理の支援 こうしたサービスを通じて、「薬のことならこの人に相談すれば安心」と感じていただける存在を目指しています。 ________________________________________ おわりに 日々の健康を守るためには、薬を「正しく理解し、正しく使う」ことが何より大切です。 薬剤師はそのお手伝いをする専門職です。薬のことで困ったとき、疑問に思ったときは、ぜひ薬局で気軽にご相談ください。 本講座が、皆様の薬との向き合い方を見直すきっかけとなれば幸いです。 |